2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「骨董商Kの放浪」(16)

N婦人の一件があったあと、僕はしばらく家に引き籠っていた。婦人との出来事もあったが、あの李朝(りちょう)白磁を見極められなかったショックもあったわけで。あんなに、東博や民藝館や、大阪まで行って数多くの李朝白磁を見てきたはずなのに。「やっぱり…

「骨董商Kの放浪」(15)

僕は再び椅子に座り、長い年月をかけて磨き上げられ、艶光りしている重厚な木製のテーブルの上に両手を置いた。そこへN婦人が、古い箱を持って現れた。そして中身を取り出して卓の上にのせた。 それは、李朝(りちょう)白磁の角瓶だった。18~19世紀くらいか…

「骨董商Kの放浪」(14)

皆の雑談がおさまった頃、いきなり司会役のあの贋物(がんぶつ)爺さんが立ち上がって挨拶。この手の爺さんはこういうときに必ずしゃしゃり出る。三代目に感謝の意を込めてのやや長めのスピーチ。僕は仕方なく聞きながら周りを見る。参加者のほとんどが女性だ…