2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

骨董商Kの放浪(30)

翌日の午後、ぼくは宋丸さんの店に向かった。今日の目的は二つ。先ずは、今回仕入れたモノを見てもらうこと。定窯白磁碗と黒釉碗の二点。そして、Saeのところの万暦豆彩馬上杯について訊くこと、である。扉を開けると、Reiが笑顔で出迎えた。 「よかったです…

骨董商Kの放浪(29)

帰国して翌日、ぼくは仕入れた品物を部屋のテーブルの上に飾った。葉(イエ)氏のところで買った定窯白磁の碗。現地で見るより一段と輝いて見えるのは気のせいであろうか。いや、気のせいではない。やっぱり良いモノなのだと、ぼくは再確認する。それと、ママ…

骨董商Kの放浪(28)

「本当に……日本にあるの?」マダムは身を乗り出すと、顔を震わせそう尋ねた。 その眼力(めぢから)に一瞬怯(ひる)むと同時に、ぼくはそのまま口を閉ざしてしまった。マダムの魂の込められた話しの流れに乗せられ、ふとそう発したが、まだはっきりした答えがで…